支援施策の活用にあたって
「農福連携」を進めるにあたり、国や地方自治体が措置している様々な支援施策について念頭に置くことも、取組を成功させる、あるいは加速する有効な手立てのひとつです。支援施策については、ざっと調べてみただけでも、国の省庁では、総務省、厚生労働省、農林水産省、さらには中小企業庁等が措置しているものがありますし、国の外郭団体が申請の窓口になっているもの、あるいは地方自治体やその関係団体が窓口になっているものなど、数多く見受けられ、ここで取り上げるのはその一部に過ぎません。
また、それぞれの支援施策は、事業の実施目的と取組可能な事業内容、事業の申請期間や申請方法など、固有の特徴を有していることから、十分にその内容を精査し、あるいは当該機関が提供している活用の事例等も参考にしながら、「我々が進めようとする『農福連携』の仕組みづくりに、十分に活用できるのか」について吟味していくことが必要になります。
場合によっては、支援施策が求めている条件と、支援を希望する事業所が実現を目指す方向との間に齟齬が見られることがあるかも知れません。
しかしながら、最も重要なのは「農福連携」を目指す事業所が、これから事業を遂行していくにあたって協力を必要とする団体や、当該事業所が持っている資源、経営環境や社会情勢等を踏まえ、合理的に描く構想であり、その構想の実現を支えてくれるのが行政等が措置してくれている支援施策です。ですから、多くの人が理解・共感できる経営構想を練ることこそが、計画実現の要とも言えるでしょう。
数多くある支援施策は、「わが国には、あるいはこの地域にはこうした課題がある。なので、その課題を解決するためには、こうした目的のもとに政策を誘導していく必要がある。」とした視点で措置されています。このため、支援施策を構築・提供する主体の側は、社会情勢の変化に基づいた施策の変更や組み換えを行う必要もあり、利用を希望する側は、こうした主体側の動きについても注視することで、事業所としての構想の見直しに反映する必要が生じるかもしれません。
事業所としての魅力ある構想を実現するためには、深い共感を得られる計画づくりと、計画の実現を支援・加速してくれる施策研究の双方が重要です。
1 助成金等の支援施策
(1)障害者作業施設設置等助成金
| ■支援内容 | 例えば、聴覚に障害を持つ者が作業の過程を判断するための色別パトライトを設置するなど、障害者が作業を容易に行えるような施設の整備等を行った場合の助成支援です。 |
| ■支給期間 | 賃借の場合は3年間 |
| ■交付率 | 対象費用の3分の2 (作業施設、付帯施設、作業設備の合計は対象障害者1人につき450万円、作業設備の場合は対象障害者1人につき150万円まで) |
| ■交付対象者 | ・身体障害者 ・知的障害者 ・精神障害者 |
| ■特記事項 | 対象障害者の雇い入れ、中途障害者に係る職場復帰、人事異動等から6か月以上経過しており、作業施設等の設置・整備を行う十分な必要性がないと判断される場合は、対象となりません。 |
| ■実施主体 | 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) |
| ■URL(リンク) | https://www.jeed.go.jp/disability/subsidy/shisetsu_joseikin/index.html |
(2)雇用就農資金
| ■支援内容 | 就農を希望する49歳以下の障害者の方を新たに雇用する農業法人等に対して、新規就農者1名あたり最大75万円/年(最長4年間)を助成します。 |
| ■事業期間 | 最長4年間 |
| ■交付額 | 新規雇用就農者1名あたり最大75万円/年 (通常は最大60万円/年で、新規雇用就農者が障害者の方の場合には最大15万円/年が加算されます) ※1経営体当たりの新規採用人数は年間5人まで |
| ■主な要件 | 新規雇用就農者の1週間の所定労働時間は、年間平均35時間以上となる必要がありますが、障害者の方の場合は20時間以上となります。 なお、特定求職者雇用開発助成金との併用は認められません。 |
| ■その他 | 雇用就農資金の募集は全国農業会議所が行っており、申請や問い合わせは各都道府県農業会議等で受け付けています。 |
| ■URL(リンク) | https://www.be-farmer.jp/farmer/employment_fund/original/ |
(3)特定求職者雇用開発助成金
| ■支援内容 | ハローワーク等の紹介により障害者等を継続して雇用する労働者として雇用した事業主に対して助成金を支給 |
| 特定困難者支援コース | ハローワーク等の紹介により障害者を雇用する事業主に、一人当たり50万円(中小企業の場合は120万円)等を支給 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/ kyufukin/tokutei_konnan.html |
| 発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース | ハローワーク等の紹介ににより発達障害者又は難病患者を雇用する事業主に対して50万円(中小企業の場合は120万円)を支給 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/ kyufukin/hattatsu_nanchi.html |
| ■実施主体 | 厚生労働省 |
2 農業参入
(1)農地の確保
障害者就労施設が自ら農業生産を行う場合は、農地の確保が必要です。
障害者就労施設を運営する社会福祉法人やNPO法人等が農地を確保したい場合、①農業目的で農地を借りる方法、②社会福祉事業等の目的で農地を購入、又は借りる方法、があります。
①農業目的で農地を借りる場合
法人として、農地の権利設定について農業委員会の許可【注】を受けることで農地を借りることができます。
(許可を受けるに当たっての確認事項)
- 農地の全てを効率的に利用すること
- 貸借契約に、農地を適正に利用していない場合には契約を解除する旨の条件が付されていること
- 1人以上の役員等が、農業に常時従事すること
- 周辺の農地利用に支障がないこと
- 地域における適切な役割分担のもとに農業を行うこと
※上記のほか、農地中間管理事業の推進に関する法律に基づく手続きによって農地中間管理機構(農地バンク)を通じて農地を借りることができます。また、都市農地貸借円滑化法に基づく手続きによって農地(生産緑地)を借りることができます。
【注】農業委員会の許可
農地の権利を取得する場合には、原則として、農地法に基づく市町村の農業委員会の許可を受ける必要があります。まずは、農地が所在する農業委員会にお問い合わせください。
※農業委員会とは、農地法に基づく農地の売買・貸借の許可など、農地に関する事務を執行する行政委員会であり、各市町村に設置されています。
②社会福祉事業等の目的で農地を購入又は借りる場合
社会福祉事業等を行うことを目的として設立された法人(医療法人、社会福祉法人その他の営利を目的としない法人)として、農地の権利設定について農業委員会による農地法の許可を受けることで、農地を購入、又は借りることができます。
(許可を受けるに当たっての確認事項)
- 農地の全てを利用すること
- 周辺の農地利用に支障がないこと
- 農地を法人の目的に係る業務の運営に必要な施設のように供する(※)こと
※例えば、障がい福祉サービス等を提供する法人が、園芸療法の一環として農地を利用する場合などが考えられます。
(2)農地の転用
社会福祉法人やNPO法人等が、障害者就労施設を立ち上げる際には、作業室、相談室等の設備を設置する必要があります。これらの法人等が、農業に取り組むため、に内に設備を設置する際には、農地転用許可の取扱について、次のことに留意する必要があります。
なお、設備を設置する農地が農用地杭域内にある場合は、予め市町村による農業用施設用地への用途設定、もしくは、農用地杭域からの除外が必要になります。
- 自らの農業生産活動に必要不可欠な農業用施設(畜舎、温室、種苗貯蔵施設、農機格納庫、農業用倉庫、トイレ、駐車場、更衣室等)を設置する場合、その規模が2a未満であり、かつ、自ら交錯している農地に設置するのであれば、転用許可は不要です。
- ①に該当しない場合であっても、農業用施設であれば、転用許可を受けることで、設置することができます。
- 法人が社会福祉事業等を進めるために必要な設備であれば、農業用施設以外であっても、転用許可を受けることで、設置することができます。(設備等の要件を満たす必要があります。)
(3)認定農業者に対する支援
農業者(農業経営をしている社会福祉法人やNPO法人等も含まれます。)が市町村の農業経営基盤強化促進基本構想に示された農業経営の目標に向けて、自らの創意工夫に基づき、経営の改善を進めようとする農業経営改善計画を作成し、市町村等の認定を受けることで、認定農業者として様々な支援措置を受けることができます。
【認定農業者に対する支援措置の例】
| 経営所得安定対策 | 麦・大豆等の恒常的なコスト割れを補てん(畑作物の直接支払い交付金) 米価等が下落した際に収入を補てん(収入減少影響緩和交付金) |
| 融資(スーパーL資金) | 農地、農業経営用施設・機械の取得等に必要な長期低利融資(融資額:個人3億円、法人10億円(民間金融機関との協調融資の状況に応じ30億円))。地域計画のうち目標地図に位置づけられた等の場合、貸付当初5年間の金利負担が軽減 等 |
認定農業者制度の詳細 https://www.maff.go.jp/j/kobetu_ninaite/n_seido/seido_ninaite.html
3 農山漁村振興交付金
【地域資源活用価値創出推進事業・整備事業(農福連携型)】
| ■概要 | 農福連携の一層の推進に向け、障害者等の農林水産業に関する技術習得、障害者等に農業体験を提供するユニバーサル農園の開設、障害者等が作業に携わる生産・加工・販売施設の整備等を支援します。 |
| ■支援内容 | ① 地域資源活用価値創出推進事業(農福連携型のうち農福連携支援事業) 障害者等の農林水産業に関する技術習得、作業工程のマニュアル化、ユニバーサル農園の開設、賃借による移動式トイレの導入等を支援します。 ② 地域資源活用価値創出整備事業(農福連携型) 障害者等が作業に関わる農林水産物生産・加工・販売施設、ユニバーサル農園施設、安全・衛生面にかかる付帯施設等の整備を支援します。 |
| ■事業期間 | ① 2年間(+自主取組:1年間) ② 2年以内(基本1年間) |
| ■交付率 | ① 定額 ・上限150万円/年、整備事業の経営支援を実施する場合は上限300万円/年 ・作業マニュアルの作成等に取り組む場合は初年度の上限額に40万円加算可能 ② 1/2以内又は各上限のうちいずれか小さい方 ・上限:簡易整備200万円、介護・機能維持400万円、高度経営1,000万円、経営支援2,500万円 |
| ■実施主体 | 農林水産業を営む法人、社会福祉法人、特定非営利活動法人、一般社団法人、一般財団法人、公益財団法人、医療法人、地域協議会(市町村を含むこと)、農業協同組合等の農林漁業者の組織する団体、民間企業 |
| ■主な要件 | ・農林水産分野の作業に関わる障害者等を事業実施3年目までに5名以上増加させること。ただし、生活困窮者、引きこもりの状態にある者等の増加については障害者との組み合わせであって、過半数が障害者であること。 ・農林水産物加工販売施設に供する農林水産物は、事業実施主体及び連携する者が生産したものが過半を占めること。 ・原則、農福連携支援事業と整備事業は併せて行うこと。 |
| ■URL(リンク) | https://www.maff.go.jp/j/nousin/kouryu/noufuku/sien_seido.html |
※ 本コンテンツは、農林水産省農村振興局都市農村交流課が作成した「農福連携ガイドブック」より引用させていただいております。
